第37回:【できるだけ速やかに】不動産の相続手続き【相続登記の費用手数料・所有権移転の登記・共同相続登記】

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ここが大切!

  • 故人の不動産の名義を移す相続登記を行う。
  • 登記申請書は自分で作成する。
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相続登記は専門家に依頼したほうがよいことも

財産の名義変更のなかでも、とりわけ重要かつ大変なのが不動産の名義を移すこと、すなわち所有権移転の登記です。相続を原因とするこの登記を、一般に相続登記と呼んでいます。不動産を所有していた方が亡くなった場合は、この相続登記を行う必要があります。

相続登記の手続きは、その不動産を管轄している法務局に出向いて行いますが、かなりの手間と時間がかかります。例えば、遠くの土地や建物を相続した場合も、原則としてその土地や建物を管轄する法務局に出向かなければなりません(現在はインターネットを通じたオンライン登記申請も可能。ただし、設備や環境を整えるために時間と費用がかかる)。また、相続登記の申請を行う前に、申請方法を正確に知る必要があり、法務局に何度も足を運んで相談することになります。ただし、法務局は手続きの相談には乗ってくれますが、法律的なアドバイスは受けられないものと考えたほうがよいでしょう。しかも、法務局は平日しか開いておらず、順番待ちで何時間も待たなければならなかったりするため、会社勤めの人の場合は会社を何日も休まなければならなくなることもあります。

このような手間を考えると、法律や手続きの知識が豊富な専門家に依頼したほうが安心といえるでしょう。専門家に依頼すると、自分で手続きを行う場合の費用に加えて、必要書類を取得するときの手数料や相続登記申請の手数料がかかります。また、相続人の数、不動産の数や価値、権利関係の複雑さに応じて報酬が決められます。専門家に依頼する場合はよく相談し、見積もりを取ったり、ある程度の上限を確認しておくなどが必要です。一般的な報酬額は5~7万円と考えてよいでしょう。

ちなみに、前述のオンライン登記申請を導入している専門家もいます。その場合は1申請につき最大で3000円、通常の登記申請よりも登録免許税が安くなります。

相続登記にかかる費用と専門家への手数料

相続登記にかかる費用と専門家への手数料

相続登記の手続きの流れ

①相続の発生

被相続人が亡くなる。

②遺言書の有無を確認

③相続人を確定する

戸籍謄本等で相続人を調べ、相続関係説明図(家系図)を作成する。

④相続財産を調査する

  • 相続財産がとれくらいあるか、債務がどれくらいあるかを早めに確定させる。
  • 登記事項証明書(登記簿)を取得し、所有者等を確認する。
  • 遺産が多い場合は被相続人の死亡後10か月以内に相続税の申告が必要。
  • 債務が多い場合は、相続発生後3か月以内に相続放棄の申述をすることができる。

⑤遺産分割協議

相続人全員で、誰がどの財産をどれだけ相続するかを協議する。(遺産分割協議

⑥遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書を作成する。相続登記手続きや名義変更手続き、相続税の申告などに必要。

⑦相続登記の申請

相続登記申請書を作成し、管轄の法務局へ相続登記の申請をする。

登記申請書の記入例

登記申請書 見本 記入例 ひな形

登記を申請するのは原則として相続人1名

相続登記を申請するのは、原則としてその物件を相続する相続人です。相続人が複数いる場合は、そのうちの1名が全員の分を申請することもできます。

また、遺産分割協議で、複数いる相続人のうちの1名が不動産を相続する場合は、その不動産を取得する相続人が申請します。遺言の場合も同様です。

なお、申請人が複数いる場合(申請登記書に申請人として押印)でも、その全員が法務局へ出向く必要はなく、そのうち1人が代表して法務局へ出向いても、あるいは郵送してもかまいません。

相続登記を申請する際に提出するのが相続登記申請書です。不動産を管轄する法務局ごとにA4判の用紙を使って自分で作成します。

相続登記が必要になる3つのケース

相続登記の手続きは、大きく3つに分けられます。それぞれのケースによって、必要書類が若干異なります。

①遺産分割協議による相続登記

遺言書がある場合でも、遺言書と異なる遺産分割協議をすることもあり、その場合は遺産分割協議による相続登記を行います。そのため、遺産分割協議書の添付が必要です。遺産分割協議書では、誰がどの不動産を相続するのかが明確にされ、相続人全員の署名と実印の押印がなされています。印鑑証明書も併せて添付します。

②遺言書による相続登記

遺言により相続人のうち特定の1人の名義にするなどの指定がある場合には、遣言書を添付して申請します。公正証書遺言以外の遺言の場合には、検認済みの遺言書を添付します。

③法定相続分どおりの相続登記

法定相続人が複数いる場合(共同相続人)は共同相続登記を行います。つまり、共同相続人全員が共同して相続登記を申請しますが、共同相続人のなかの1人が全員のために申請することもできます。

以上の3つのケースに共通する書類は、固定資産評価証明書相続関係説明図です。前者は登録免許税の算出のため、登記申請年度の固定資産評価証明書(または固定資産税納税通知書)の添付も求められます。市区町村役場(東京23区の場合は都税事務所)にて取得します。後者は、被相続人の相続人が誰であるかを一目でわかるように図式化したもので、これを提出すると、戸籍の原本を返却してもらえます。

相続登記に必要な書類

相続登記に必要な書類

住宅購入時に必要な登録免許税とは

住宅や土地を購入するときには、印紙税、消費税、登録免許税、不動産取得税などの税金がかかります。印紙税とは、住宅の売買契約書や住宅ローンの契約書などを交わすときに契約書にかかる税金で、原則として収入印紙を契約書に貼付して納税します。

登録免許税とは、登記を申請するときに国(法務局)に納める税金で、資産の権利に移転や変更があった場合に、国が税金を課すと法律で定められています。支払い方法は、登記を法務局に申請する際に、登録免許税分の収入印紙を貼って納めます。つまり、登記が完了する前に納めなくてはなりません。

登録免許税の税率は、登記の目的によって異なります(不動産売買の場合は不動産の価額の2%、相続の場合は0.4%など)。不動産の価額は、その価値が記してある「固定資産評価証明書」(管轄の税務署や市町村役場で取得できる)で確認します。

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