<<第47回:相続人全員が「連帯納付義務」を負う【相続税の連帯納付義務・連帯納付責任】
ここが大切!
- 家族間で相続争いを起こさないために遺言を残す。
- 遺言でできることは相続、財産処分、身分について。
財産を巡って争いが起きないように遺言を残す
その人の死後、遺された財産が、誰にどのくらいの割合で相続されるかということは、民法によって定められています(法定相続分)。しかし、法定相続は必ずしも個々の家庭の事情に合っているとは限りません。遺言とは、こうした法定相続分を遺言者の意思によって変更し、その家庭の実情に沿った相続財産の分配を行うことが目的です。
実際、どんなに仲のよかった家族や親族でも、遺言がないために相続を巡って骨肉の争いが起こることも少なくありません。被相続人が生涯かけて築いた大切な財産を有効・有意義に活用してもらうための意思表示をするとともに、相続を巡る争いを防止することも遺言の目的といえるでしよう。
遺言が必要なケースはさまざま
遺言は、裕福な人にだけ必要というわけではありません。子どものいない夫婦や、子どもがいてもきょうだい仲が悪い場合、また、農業や事業を営んでいる、内縁の妻がいる、血縁関係が複雑といったケースも、トラブルを避けるために遺言が必要となることがあります。
法定相続分に従った場合、死後、その財産が誰に、どれだけ相続されるかを一度計算してみるとイメージがつかみやすいかもしれません。遺言を書く人の家族関係や状況をよく把握して遺言を作成することが大切です。
遺言には特別方式と普通方式があります。一般的に遺言を作成する場合は、普通方式(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)が用いられます。
遺言でできること(おもな遺言事項)
項目 | 内容 | |
---|---|---|
遺産に関すること | 相続分の指定またはその指定の委託 | 法定相続人が複数いる場合には、遺言によって法定相続分の割合を変更できる。また、自分が死んだときに、割合を決める人を指定することもできる。 |
特別受益の持戻しの免除 | 生前贈与を相続分に反映させない旨の意思を表示できる。 | |
遺産分割方法の指定とその委託 | 相続人が複数いる場合や、100%に達しない包括遺贈を受けた人がいる場合、遺言によって分け方を決めておくことができる。また、自分の死後の分け方を決める人を指定することもできる。 | |
推定相続人の廃除とその取り消し | 法定相続人の地位がある場合でも、遺言者に対する虐待や重大な悔辱などがある場合は、裁判所に申し立てて、裁判所が認めれば法定 相続人の権利を失わせることができる(推定相続人の廃除)。逆に、生前に推定相続人の廃除の裁判を得ていても、許す気になれば遺言でその廃除を取り消すことができる。 | |
遺産分割の禁止 | 一定期間、遺産分割をすることを禁止することを定めることができ る。最長5年まで可能。 | |
遺贈の設定 | 自分が死んだら特定の人に財産を与える(遺贈)ことを遺言することができる。一般的には遺贈の相手(受遺者)は法定相続人でない ことが多い。 | |
遺贈の減殺方法の指定 | 道留分を侵害するような内容の遺言をした場合、どの財産から減殺請求の対象にするかなどの遺留分減殺方法を決めておくことができる。 | |
寄付行為の設定 | 財団法人の設立を目的とした寄付の意思を表示できる。 | |
信託の設定 | 信託銀行などに財産を信託する旨の意思を表示できる。 | |
身分に関すること | 子の認知 | 未成年後見人、未成年後見監督人を指定することができる。 |
未成年後見人、未成年後見監督人の指定 | 自分1人で親権者を務めている未成年者がいる場合、自分の死後の未成年後見人、未成年後見監督人を指定することができる。 | |
その他 | 遺言執行者の指定とその委託 | 自分の死後に、遺言どおりの処理がなされるよう、その手続きをする遺言執行者を指定できる。遺言執行者を決める人を決めておくこともできる。また、遺言執行者の報酬も決めておくことができる。 |
祭祀承継者の指定 | 祭記承継者は慣習によって定められるのが一般的だが、遺言により指定することもできる。 | |
遺言の撤回 | 遺言の全部または一部を撤回できる。自筆証書遺言の場合は、破棄して作り直せる。公正証書遺言の場合は「以前の遺言を撤回する」として新しい遺言を作る必要がある。 |
遺言に書く内容に決まりはありませんが、すべての内容に法的効力があるわけではありません。以上の内容には法的効力があります。
遺言は早い時期に書いても変更・取り消しができる
遺言は、死期が近づいてから、あるいは年をとってから書くものというわけではありません。いつ何が起こるかわからないので、残された家族が困らないように、元気なうちに遺言を書いておきたいものです。満15歳以上になれば、いつでも遺言を作成することができます。
早い時期に書いておいても、途中で相続人の状況や財産の内容が変わったりした場合は、内容の変更や取り消し(撤回)は何度でもできます。