第57回:成年後見制度の利用【成年後見人制度法定後見制度・任意後見制度・専門職後見人】

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ここが大切!

  • 判断能力が衰えたときに財産を守ってもらうために利用する。
  • 判断力があるときは任意後見人をあらかじめ決めておく。
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判断能力が衰えたときに利用する

誰しも、老いを感じるとともに認知症の不安を感じ始めます。こうした精神上の障害(知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない人が不利益を被らないように家庭裁判所に申し立てをして、その人を援助してくれる後見人をつけてもらう制度が成年後見人制度です。

一言で言えば、「本人の財産を守る」のが成年後見人に課せられた仕事です。この制度には、法定後見制度任意後見制度の2種類があります。

法定後見制度と任意後見制度

例えば、ひとり暮らしとなった認知症の母親が高額なリフォーム工事の契約をさせられたり、必要でない物をどんどん買い込んだりしていることに気づいた娘が、成年後見の申し立てを家庭裁判所に行い、成年後見人となった第三者がその母親の生活を支えることになったとします。これが法定後見制度の利用です。

つまり、法定後見制度は、本人の判断能力が衰えてから利用するもので、後見人は家庭裁判所が選任します。申し立てができるのは、配偶者、4親等以内の親族、任意後見人、任意後見監督人(家庭裁判所が選任)などです。

法定後見制度における仕事は、本人の精神上の障害の程度によって、①後見(ほとんど判断できない人を対象)、②保佐(簡単なことは自分で判断できるが、法律で定められた重要なことについては援助が必要な場合)、③補助(大体のことは自分で判断できるが、難しいことは援助が必要な場合)に分かれていますが、申し立ての約8割が①後見です。

一方、最近物忘れがひどくなってきて将来が心配になった人が公証役場を訪れ、信頼できる友人と任意後見契約を結び、自分が認知症と診断されたときなどに家庭裁判所に申し立てをして、任意後見監督人を選任してもらい、任意後見契約を結んだ友人に財産の管理などをお願いするといったケースもあります。これが任意後見制度です。

つまり、任意後見制度は、本人の判断能力が衰える前に代理人(任意後見人)を選び、自分の療養看護や財産管理について代理権を与える契約を結んでおくものです。

成年後見人ができること

成年後見人は、本人のために重要な法律行為を代行したり、取り消ししたりして、本人の権利を守ってくれます。同時に、そうした活動を家庭裁判所に報告する義務も課せられています。

日常の主な仕事

成年後見人がしてはいけないこと

成年後見人がしてはいけないこと

後見人にできる人、できない人

では、どんな人を成年後見人として選ペるのでしょうか。基本的に誰でも後見人にすることができます。ただし、未成年者や破産者、被後見人と訴訟関係にある人、およびその配偶者や直系血族は後見人にすることはできません。

適当な後見人が見つからない場合は弁護士や行政書士、社会福祉士などの専門職後見人を検討します。近年は親族以外の第三者を成年後見人に選ぶ例が増えており、この傾向は今後も続くと予想されています。

家族や親族が後見人になる場合は無報酬でもかまいませんが、その旨を契約書に明記しておく必要があります。一方、専門職後見人の場合は、後見される人の資産から報酬を支払うことになります。実務上は月2~3万円となっています。

成年後見の申し立ては家庭裁判所へ

成年後見制度を利用するには、後見される人の住所地の家庭裁判所に申し立てをする必要があります。自分や親が認知症などで冷静な判断ができなくなった場合や、死後のスムーズな遺産分配などのことを考えて、申し立てを検討することも1つの手段です。手続きは自分(家族など)でも行えますし、弁護士や司法書士などに依頼することもできます。

手続きは、法定後見人と任意後見人とでは異なります。(下の図を参照)

法定後見制度の手続きの流れ

法定後見制度の手続きの流れ

任意後見制度の手続きの流れ

任意後見制度の手続きと流れ

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